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ブログの再録だとは思うのですが、いつ書いたのか不明です。
「あ!どこ行くんだよ!?」
寝そべっていた長椅子から飛び起きて、エースが叫んだ。
慌てて駆け寄り、マルコの手首を掴む。掴まれた手首を一瞥し、マルコはうんざりしたように息を吐いた。「散歩だよい」
くるりと外に目をやって、中庭を指差した。
コテージから見える中庭は、南国の木々が陽光を浴びて葉が輝いている。風に吹かれて、ゆるやかに揺れていた。 エースとマルコは、斥候を兼ねて、夏島に逗留している。
最近、白ひげの領海になったばかりで、お世辞にも治安がよいとはいえず、絶えず揉め事で呼び出されている島だ。今回も小競り合いが大事になり、機動性に優れているエースが先行して事態をおさめることになっていた。大事をとって、マルコがそのお目付け役としてついてきたのだ。
お目付け役が功を奏したのか、大した被害もなく、始末がついた。
モビー・ディック号が到着するまで、あと数日かかる。島の人々から提供された宿が、海が一望できる高台のホテルだった。
「おれも行く!」
マルコを見上げて、エースが強請る。暫く見つめ合うと、マルコは首を竦め、好きにしろよい、小さく呟いた。 いつもと違い白いシャツをはおって、ビーサンをひっかけて、二人は椰子林を歩く。その手はしっかりと繋がれていた。
手を繋ぐことに、はじめマルコは難色を示したが、揉め事を収めたご褒美を強請られて、渋々頷いた。あとでこれ以上厄介なご褒美を強請られるより、マシだと考えたからだ。
マルコが頷くと、エースは嬉しそうに笑う。そんなに喜ばれると、マルコの方が恥かしくなった。
素直で、直向きなエースの愛情は、マルコを落ち着かなくさせる。
エースは不思議だった。年齢の割に大人かと思えば、子供っぽい部分もある。すべてを火の海に化し、迷いなく敵を屠る残酷さと、家族のことでは些細なことまで気にかける繊細さを見せた。
『あんたが好きだよ』
照れたようにエースが告げた。はにかむように笑う。
エースのことをそんなふうに考えたことがなかった。マルコは戸惑っていた。
『好きになってくれなんて言わねェよ』
マルコには意味がわからなかった。
『ただ、おれがあんたを好きなことだけ知ってほしかったんだ』
あどけなさを残すエースの顔は、どこか大人びて見えた。
それが家族へ対する愛情なのか、エースの望む愛情だったのか、マルコには判断がつかなかったが、確かにエースを好きだと思った。可愛いと感じたのだ。
「あ、鳥」
繋いだ手を揺らして、エースが声をあげる。視線の先には、赤い尾羽の白い鳥がいた。
「けっこうデカイな」
「あんたよりは小さいよ」
「おれは鳥じゃねェよい」
何かにつけて不死鳥であることをからかわれる。トリトリの実の能力者であって、鳥ではない。
「綺麗だなァ」
尾羽を広げて飛び立つ様を眺め、エースが感嘆の声をあげる。
大きく羽ばたいた鳥の姿は、確かに勇壮で美しかった。
「でも、あんたの方が綺麗だ」
満足そうに微笑んで、エースはマルコを見つめる。
エースの眼差しには、からかいの色はなく、本気だと知れた。だが、本物の鳥と比較され、マルコは答えに詰まった。
「……ありがとよい」
とりあえず礼を言うと、エースは嬉しそうに破顔した。
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