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エーマル的なもの

暖かくなってきたので、頭が湧いた。
エースからの告白ものが大好きです。でも意味不明。
風呂で考えたときは、もっと違う話だったのになあ。



「好きだ」
 そう告げた声は震えていた。我ながら情けなくなる。思わず青瞳から視線を逸らせた。
「……それで?」
 感情のこもらない平坦な声で問われた。顔をあげると、マルコは目を眇め、エースを見つめていた。一瞬、エースは自分が何を言ったのか、忘れてしまうほど、マルコはいつもと同じ調子だった。
「好きだって言った」
「そりゃァ聞いた」
「他に何が聞きたいんだよ」
「おれを好きでどうするんだよい」
「あんたの恋人になりたい」
「無理だ」
 マルコは即答した。あまりの返事の早さに、エースは断れて落ちこむよりも、怒りの方が先にきた。
「なんで!」
「なんでって、おれに拒否権はねェのかよい。お前のそれは告白なんだろい。おれに断る権利があるよな?」
「……そりゃ、あるけど」
「だから断る。お前と付き合う気はねェ」
「おれは諦めねェからな!」
「好きにしろよい」
 呆れたように肩を竦めて、マルコはその場を去っていった。
 それから数日の間、エースからの求愛行動は続いたが、マルコは素っ気ない態度だった。答えも変わらなかった。
「お前も懲りねェなァ」
 十一回目の告白の後、マルコは深く溜息をついた。
「毎日来ても答えは変わらねェよ、少しは引くってことを覚えろよい」
 エースの告白は、週に一度になり、それが月に一度になり、やがて年に一度になっていった。そうして十年が過ぎた。二人は家族のままだった。
 新年の挨拶の代わりに、好きだと言った。
 燃え盛るような恋心は消え失せて、家族の親愛が勝っていった。それでもエースは愛を告げ続けた。マルコに愛を告げながら、他の誰かも愛した。それは娼婦であったり、酒場の女であったり、海賊であったり、堅気の女であったり、それこそ外見も内面も様々だったが、エースは彼女達を真剣に愛したし、愛されていた。
 
 気付けば、エースは三十になっていた。
 満天の星が輝く空の下、船首に座ってマルコと二人で酒を飲んでいた。新年はエースの生まれた日だ。マルコと二人で居たいという気持ちを汲んで、他の家族も放っといてくれる。いつもは嫌がるマルコも、この日ばかりはエースに付き合ってくれる。
「好きだよ」
 酒瓶を片手に笑って告げた。マルコはエースを見やると、呆れた顔をした。
「懲りねェな」
 酒に濡れた唇から、微苦笑が漏れる。
「おれもそう思うよ」
 エース自身も同感だったので、首肯して笑った。一頻り笑いあって、エースは酒瓶を手の中で遊ばせた。
「他の誰かを好きになっても、あんたが消えねェんだ」
 その声音の真剣さに、マルコの笑いが引っ込んだ。
「あんたと恋人になるとか、そんなのどうでもいいんだ。ただ、あんたが好きなんだ。あんたが好きで、しょうがねェんだ。最初はあんたに振られたせいだと思ってた。だって、振られたのなんか、あんただけだからさ。ずっとそう思ってて、他の奴と付き合って、それでもあんたが忘れられなくて」
 ふいに青瞳を見つめ、エースは苦笑した。
「もう自分でもよくわからねェんだよな」
 手の中の酒瓶を置いて、黒いくせ毛を掻き乱した。
「それでも、やっぱりおれはあんたが好きだよ」
 目を細めて、エースは青瞳を覗き込んだ。目の奥でマルコの感情が揺れていた。珍しく動揺している。
 堪らなくキスをしたくなったが、エースは濡れた唇を見つめるだけで我慢した。今ならキスをしても許してくれることは想像できた。けれどエースの望みはもっと別なものだ。
「……返事、くれねェの?」
 エースの囁きは驚くほど甘かった。間近で見つめ合うマルコの顔が歪んでいる。今にも泣きそうに見えた。


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